鍋の中でぐつぐつ煮えたぎるラーメンを「フーフー」しながら食べる。これぞ「鍋焼きラーメン」の醍醐味です。高知県須崎市のご当地グルメ「鍋焼きラーメン」は、戦後まもなく路地裏で開業した「谷口食堂」がルーツ。出前をするときに冷めないようにホーロー鍋で届けたのが始まりです。労働者の食べ物として、卵を生まなくなった安価な親鳥をスープや具に使い、ストレート細麺は少し硬めに仕上げ、食べる頃にちょうどいい食感になるように作られました。醤油ベースのコクのあるスープは、最後の一滴まで飲み干してしまうほど。「谷口食堂」は昭和55年頃に閉店しましたが、「あの味が忘れられない」という声が多く、何軒かがその味を引き継ぎ、地元で愛されてきました。
広く知られるようになったのは約20年前から。高速道路が延伸し、このままでは通り過ぎるだけの街になってしまうと懸念。地域活性化の起爆剤にしようと商工会議所の有志が「鍋焼きラーメンプロジェクトX」を立ち上げ、PR活動を始めました。
「鍋焼きラーメン」には、7つの定義があります。これをベースに店ごとに工夫し、鶏ガラに野菜やスルメを加えて秘伝のスープを作るなど味の違いを楽しめます。最近は進化形が登場し、キムチ味、カレー味、豚キャベツなども人気を呼んでいます。
一、スープは、親鳥の鶏がら醤油ベースであること。
二、麺は、細麺ストレートで少し硬めに提供されること。
三、具は、親鳥の肉・ねぎ・生卵・ちくわ(すまき)などであること。
四、器は、土鍋(ホーロー、鉄鍋)であること。
五、スープが沸騰した状態で提供されること。
六、タクワン(古漬けで酸味のあるものがベスト)が提供されること。
七、全てに「おもてなしの心」を込めること。
夏にアツアツ鍋焼きラーメンなんてと思うかもしれませんが、病みつきになります。さっぱりしたのどごしで、空調がきいた部屋で汗をかきかき食べるとすっきり。お酒好きの高知人は酔い覚ましに食べることも多いそうです。
食べ方にルールはありませんが、生卵の使い方がポイント。すぐに溶いたり、スープに沈めて半熟にしたり、鍋のふたに取り出してすき焼き風に、ご飯を入れて雑炊風にと味の変化を楽しめます。添えられた古漬けタクワンが良い仕事をしていて、ほどよい酸味が口直しにぴったりです。
須崎市内で鍋焼きラーメンを提供している店は約30店舗。
専門店をはじめ、道の駅、居酒屋などでも味わえ、それぞれにこだわりがあります。
昭和レトロや隠れ家的な雰囲気を楽しめるのも魅力。
今回は、鍋焼きラーメン専門の7店舗をご紹介。