不思議な縁に導かれて、国生みの島・淡路へ
完全グルテンフリーのお菓子を武器に独立開業。

2024.03.25

松浦翔太さんとまゆこさん。
5年間の島暮らしは、まるでロールプレイングゲームのように目まぐるしく変化していった。
そして今年、ふたりの新しい冒険は始まったばかり。

料理人と菓子職人 最強コンビの誕生

「淡路島に来るまでは、まさかここで独立開業するとは思っていませんでした」と話す松浦翔太さんと妻のまゆこさん。ふたりが出会ったのは大阪の一流ホテル。料理人として働いていた翔太さんに遅れること2年、まゆこさんはパティシエとして入社した。出会ってすぐにお付き合いが始まったものの、翔太さんが他県にある系列の結婚式場に異動し、遠距離で愛を育んだ時期もある。

そんなある日、ふたりに最初の転機が訪れる。知り合いのシェフが翔太さんに「淡路島のレストランで料理人を探しているから、行ってみないか」と声をかけたのだ。「いろんな経験を積むチャンスになるかも」と、一緒に淡路島へと移り住むことを決意した。「淡路島なら好きな釣りを楽しめる!と思ったことも理由です」と翔太さんは笑う。2019年、ふたりは淡路島北部・淡路市の農園レストランで働き始めた。

農園レストランはふたりの学びの場

ホテルとは違う新しい職場に、最初は戸惑いを感じたという翔太さん。というのもホテルの厨房は明確な分業制。担当の仕事をきっちりとこなせば良かったが、ここでは料理だけではなく、畑仕事や接客、経理業務など何でもやらなければならない。だが、後になってみればそれが良かった。料理人としての力はホテル時代に身に付け、農園レストランでは「経営者としての基本を学ぶことができた」と話す。

一方のまゆこさんは、農園レストランで1年半勤務した後に、「お菓子をもっと極めたい!」と島内のパティスリーへと転職する。その店はオーガニックデーツシロップやココナツシュガーでお菓子作りをしており、彼女に新たな世界を教えてくれた。

オーガニックなお菓子がチャレンジショップの目玉

カヌレと並ぶ看板商品・米粉のシュークリーム。米粉生地を膨らませるのには苦労した。

やがてふたりは2度目の転機を迎える。「NPO法人淡路國プロジェクト」が運営する「チャレンジモール福良CAP」の出店話が舞い込んだのだ。淡路國プロジェクトは2015年、淡路島での起業や移住の支援などを目的に地域の若者が立ち上げた団体。「福良CAP」は淡路島の南端、うずしおクルーズが出航する港そばにある、お洒落なコンテナハウスを活用した商業施設だ。このエリアの賑わい創出と同時に、起業出店を考える人がハウスを低料金で借りられ、腕試しができる。

「縁あって淡路島にきたのだから、思い切ってチャレンジしよう」と、店のコンセプト作りやメニュー開発に取り組んだ。ふたりは話し合いを重ねて、テイクアウトのお菓子屋さんを開くことに。当時、淡路島では売っていなかったカヌレを看板メニューにすることを決めた。しかも通常は小麦粉を使うところを、淡路島産の米粉を使って特徴を出した。試作を繰り返し、ようやく出来上がった米粉のカヌレは、片手でつまんで食べ歩きでき、常温保存できるからお土産にもぴったり。おまけに小麦粉アレルギーの人も食べられるという利点も。さらにふたりは完全グルテンフリーの米粉シュークリームも開発。2022年4月に開業した「copan」は、たちまち評判となる。「コロナ禍でしたが、京阪神からやってくる観光客が多く、順調に営業することができました」とまゆこさん。

南部散策の途中に立ち寄りたくなる場所

開業から2年目、なんと3度目の転機がやってきた。南あわじ市の造園屋のオーナーから、「敷地内に作る店舗でカフェをしないか」と誘われたのだ。店舗はグリーンショップも兼ねており、癒しに満ちた雰囲気は「copan」で提供している体に優しいお菓子とも相性がいい。「福良CAP」が借りられるのは4年までということに加えて、南あわじ市の穏やかな雰囲気やあたたかい人たちが好きになっていたふたりは、この話を有り難く受けることにした。今年1月、ボタニカルカフェ「FUKU copan」がオープン。お菓子やドリンクを通して、お客さまとのコミュニケーションを楽しみたいと意気込む。

この島に来た時、「淡路島って意外と都会!」と感じたそうだが、南部の南あわじ市で暮らすようになり新たな魅力を感じた。「観光施設が集中している北部と違い、いい意味での田舎。出会う景色は伸びやかで癒しに満ちています」とまゆこさん。それでいて橋を渡れば神戸から1時間、鳴門から40分と便利。実はうずしおクルージングや温泉郷、農業公園など、魅力的なスポットも多い。「南部散策の途中に、ふと立ち寄りたくなる、そんな店にするのが夢」。幾つものターニングポイントを経て、ふたりは定住の地を見つけたようだ。

米粉のカヌレはバニラを使わず、ラム酒の使用量も控え目にした。お子さんからお年寄りまで安心して食べられる。
松浦 翔太さん・まゆこさん
翔太さんは大阪府羽曳野市生まれ、松原市育ち。2015年にウェスティンホテル大阪に料理人として就職。まゆこさんは広島県福山市出身、同じホテルに2017年にパティシエとして採用される。2019年に淡路島に移住し、結婚。現在は夫婦で「FUKU copan」を切り盛りしている。

グリーンに囲まれた癒しの空間は、島人と旅人のサードプレイス!

1907年創業の株式会社福岡造園緑化の敷地内にあり、クラフトワークなどのものづくり教室、グリーンやガーデニング雑貨のショップも兼ねたショップ。松浦夫妻の作るお菓子や特製のドリンクが味わえるカフェスペースもゆったり。無垢材をふんだんに使った内装や解放感たっぷりのしつらえが心地良く、交流の場としても期待される。

松浦夫妻とのコミュニケーションを楽しみながら、ゆったりと過ごせるスペース
手に取りたくなる雑貨がずらり
種類・サイズも豊富なボタニカルは見ているだけで癒されそう

DATA FUKU copan
住所/兵庫県南あわじ市志知南185-2
TEL/080-4761-5111
営業時間/11:00〜16:30(l.o.16:00)
定休日/木曜日

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